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April 24, 2007

政府の投資機関

昨日のフィナンシャル・タイムズ紙(アジア版)の一面に
Japan eyes active state investment fund move
という記事が目に入りましたが、内容は、二年前ぐらいに
私が「レター」で提唱した内容と同じ目線を持っている
ものでした。

まったくの偶然でしょうが、同じことを考えている方々が
いらっしゃることは嬉しいですね。

ご参考までに当時の提唱 ↓ 

□   ■   □   ■   □

某島国に、30年ほど前に設立された政府系投資会社を最近訪問いたしました。通信・メディア、金融サービス、運輸、エネルギー・資源、インフラ技術など幅広い領域に投資しており、30年間の年率リターンは約18%、平均年間配当利回りは7%であり、その収益性は世界基準に比べてもかなり優秀なものであります。100%政府出資機関にも関わらず、彼らは「アクティブな株主および投資家として、商業的原理に基づく運営により、長期的価値の最大化」を任務としています。

「現在の事業プラットフォームの活用および今後の事業プラットフォームの構築という事業の成功により、活気ある将来を創造することが責任」を基に、彼らのキーワードはPeople(人)、 Purpose(決意)、 Passion(情熱)であると同社のサイトに明記してあります。政府機関であるのに「公共性」、「平等性」、「政策」という文言は見当たりませんので、この某島国は日本ではありません。

この国はシンガポールで、政府系投資会社はタマセック・ホールディングズ社(http://www.temasekholdings.com.sg/)という会社です。全額政府出資という意味では、日本政策投資銀行(http://www.dbj.go.jp/japanese/investor/index.html)と似ていますが、投資会社(株式投資)と銀行(融資中心)から生じる事業の違いは明らかです。

今回の出張の目的は、タマセック・ホールディングズ社の内部組織が2003年に子会社として設立した資産運用会社フラトン・ファンド・マネジメント(Fullerton Fund Management)との投資会議でした。近々募集される新しいファンドの共同運用者である日本のマネックス・ホールディングズ社の子会社であるマネックス・オルタナティブ・インベストメンツの代表のひとりとして参加いたしました。

この新しいファンドの内容は、日本・アジアに特化したヘッジファンドに投資する「ファンド・オフ・ファンズ」であります。数年前のアジア危機のときの黒幕として風説が流れた、あのヘッジファンドか?と目を疑う方々は少なくないかもしれません。アジア政府系運用会社が「アジア・フォーカス」のヘッジファンドに投資するために、日本のオンライン証券会社の運用子会社と組んで、世界の大口投資家のみならず、日本の個人投資家に同じ投資の選択肢を提供するチャンネルを構築している。政府系機関が、単年度予算の思考を打破し、長期的企業価値の最大化という原則を基に行動しなければ、なかなかこのようなイノベーションには繋がらないことでしょう。

シンガポール政府は、ヘッジファンドを怪しい存在と思うことなく、近年ではヘッジファンド運用会社設立を誘導し、実は日本人の優秀な運用者の多くがシンガポールでヘッジファンド運用会社を立ち上げています。運用会社の設立の障壁が少ないということだけではなく、税制も優遇されています。最低2名は現地採用をという条件があっても、教育・能力水準が高いわりにはコストが安いので人材は揃っています。日本では、「金融特区」の整備や「投資サービス法」の審議が進んでいるにも関わらず、長期的価値の最大化というキーワードが重視されていないので、結果として残念ながら成果が出ず、優秀な日本人が海外滞在での仕事を選択するという事態を招いています。

シンガポールでは逆に、人材を世界各国から積極的に取り入れていこうというスタンスが明白です。タマセック社のリスク管理本部長は米国人で、理事会へ直接報告するという組織的な位置を確保しています。子会社のフラトンの運用担当者の経歴に目を通してみると、全員が民間金融機関から「天上り」していて、多くは外資系出身者であります。詳しい内容はわかりませんが、給与水準は恐らく民間に匹敵するのでしょう。政府系機関が民間の優秀な人材をボーダレスに活用する公的事業の「民営化」には魅力を感じます。

役員との面談の際に、なぜタマセック社のような特殊な存在が可能であるのかと聞いたときに戻ってきた答えは「政治的意志」でした。そして、安易に「政治・政策意図」の横槍が入らないように運営現場にエンパワーメントを与えているということでした。9人の取締役は大統領が認定しなければなりませんが、たった一人が「お国」を代表するシンガポール財務省の役人で他は外国人も含む公私の有職者のメンバーであるそうです。

シンガポールにはタマセック社とは別に政府の外貨準備金を運用するGICという政府系機関も存在し、世界から一目置かれている株式、債券、不動産そしてその他案件の有名な投資家であります。もちろん、日本と違ってシンガポールは規模が小さく、ある意味では窮屈な独裁国であるからこのようなことを実施できるという面もあります。しかし、世界から尊敬される投資家がこのような小国から誕生しているということも事実であります。

最も優秀な人材を集め、日本の経常黒字を世界で運用する官民、いや、民官組織の存在で企業・個人の繁栄によって国家社会が繁栄する、というパラダイムを日本に植えつけることができると想像するとワクワクします。非現実的といわれるのは目に見えてしまいますが、特区などで小規模な実験として始められないでしょうか。


         平成17年7月6日
         渋澤 健

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