民間開拓
今回は、自分にとって初めての十勝になりますが、ここは、
民間によって開拓された道内でもユニークな地域です。
農業が経済の基盤なので、農協はそれなりの存在感が
あります。ただ、主な耕作物は麦であり、収穫の量と質が
天候によってかなり影響されるようなので、スピーディ
に動けること、また、値が高いところに臨機応変に納入する
ということが常識になっていて、農協をバイパスして、直接
の販路も築いているよう農家が多いようです。
この地域の開拓の中心的な存在は1898年に設立された
十勝開墾合資会社という、渋沢栄一を含む当時の財界人ら
が出資した農場会社です。政府から貸下げた3500万坪
によって事業を開始しましたが、交通、天候、流通などの
困難な課題をたくさん抱え、なかなかは軌道に乗らない
苦しい事業でした。ただ、1907年に鉄道が開通したという
ことにより、機運が好転します。
設立された17年目の1915年にやっと配当を支払うことが
できて、26年目の1924年に明治製糖株式会社に事業を
譲渡してエグジットができたという、まさに「30年投資」の
スケールのものでありました。
その十勝開墾会社の時代の建物が残っている跡地に
午前中ご案内していただきました。
また、栄一が十勝開墾会社を売却した後に縁が切れた訳では
なく、1926年に寺院の設立のために寄付をします。その関係で、
青淵山寿光寺(*青淵=せいえん=渋沢栄一のこと)という
お寺が現在でも存在しています。
お伺いしたときに、和尚様をはじめ複数の方々が出迎えて
いただき、光栄でした。
午後の「かちまい経済セミナー」は150名定員の会場が、
主催者の方々が気を使って席をゆずって退場していただいた
ほど、満員御礼の状態になり、大勢の方々に熱心に聴講して
いただき、とてもうれしかったです。
このように歴史を遡って検証してみると、必ず、そこに人と人
のご縁があります。100年以上前にご先祖様が築いてくれた
ご縁が、このような形で、今日の数々の新しいご縁につながる
とは、とても感慨深く、感銘を受けました。この新しいご縁が、
更につながり、広がることを楽しみにしております。