「足し算・引き算」を卒業して「掛け算」の税制度を
このような動きは、日本社会の活性化の弊害となり、成長戦略に反する
最悪な傾向です。
「成長」という重要要素が欠けている「足し算・引き算」という旧来の思想から
打破できない税制度では財政健全性にもつながりません。「掛け算」という
成長のメンタリティでパイを大きくして税収入を増やすべきです。
記事によると、「資産運用益への課税も議論する。」これは、「利益を公益に
つかう」ことが大義であると民間企業が中心に反発が強いと報道されて
いますが、少なくとも私はこのような「強い反発」を「民間企業」から感じた
ことは全くありません。
米国の税制度の場合、例えばprivate foundation(民間財団)が非営利
活動して認められるには、運用資産の5%を寄付助成金として活用する
必要があります。つまり、運用リターンが5%以下であれば運用資金が
目減りますが、5%以上のリターンであれば逆に運用資金が増えて、
翌年の寄付助成金も増えるという「掛け算」の発想です。
5%のベンチマークを持つ長期資金を資本市場に供給するということに
なり、これらがアメリカのベンチャーキャピタルや再生ファンドへの
リスク・キャピタルの財源となります。新事業が立ち上がり、旧事業が
再生されれば雇用が増え、結果的に税収入も増えます。これも
成長という「掛け算」になります。
また、記事では「公益法人の一部では脱税などの不祥事が相次ぎ、税制
優遇への国民の視線は厳しい」ことを問題視しています。「一部」の不祥事
なのに、「全体」を罰することに賛同することが全く解せません。「一部」の
不祥事えあれば、「一部」を徹底的に罰するべきです。
「課税強化はこうした公益法人への優遇批判を和らげる効果も見込める」
という記事のしめくくり。まるで、応援しているような書きぶりです。
日本経済を掲げる報道紙が、「結果平等」・「政府主導主義」の旗を振って
いるように読めてしまうことが、極めて残念です。