フローだけに頼らず、ストックをつくろう
昨日、に浜松でグロービス経営大学院の在学生・卒業生の大集会「あすか会議」の
分科会「ソーシャル化する社会の新たな資本主義」のパネルに登壇しました。コモンズ
社会起業家フォーラムのOBの佐藤大吾さん(一般社団法人ジャパンギビング代表理事)
と藤沢烈さん(一般社団法人RCF代表理事)のお二人と、社会起業家の仙人的ドン
である宮城治男さん(NPO法人ETIC代表理事)の進行でした。
朋友の皆さんなので、とてもリラックスした雰囲気で、色々と話が展開しました。
また、満員御礼の会場の皆さんの真剣な姿勢が印象的でした。
私が思うに、日本の非営利セクターの財務はフローというマインドセットに支配されて
いることが課題だと思っています。つまり、入ってくるお金を全て期中に使うということ
です。税制度もそのように設計されていて、内部留保することは「悪」と見なされて
います。予算は使いすぎても、残してもダメ。政府予算と同じ感覚ですね。
だから、会計上、色んな付け替えとか変なことが起こりやすい状態を招きます。また、
これでは非営利NPOは政府の下請けのような存在に留まり、独立した第三セクター
になりにくいです。
アメリカと日本の非営利セクターの根本的に違うところは、アメリカの場合、ストック
という概念が根付いていることです。たとえば、5%ペイアウト・ルールという税制度が
あります。基金が資産の5%を社会的活動に拠出するのであれば、非営利団体と
見なされ、税が免税されるのです。
ということは、残った95%基金を投資に回して、5%以上の年率で長期的に運用できれば、
その基金は永久的に存在できます。社会的活動に永久的に運営資金を供給するだけでなく、
資本市場に良質的、長期的なリスクマネーも供給しているWin-Winのエコシステムをつくり
あげています。
一方、寄付・補助金というフローに頼るだけだと、そのフローが枯れてしまうと、大事な
社会活動を継続することができません。
日本のようなマイナス金利の状態で、5%以上の利回りを確保することは無理と思われる
かもしれません。でも、日本でも、例えばコモンズ30ファンドの設定来の長期的リターンは
年率化で二桁です。もちろん、リスクマネーになりますが、適切なリスクを取れば、長期的に
適切なリターンを得られると思います。
コモンズ30ファンドの「SEEDCap」は、このストックの考えを参考に、社会起業家を応援する
資金を拠出しています。お仲間(受益者)の長期投資の運用を託されたコモンズは年間
1.15%(税前)の信託報酬を頂戴しています。その公募ファンドからの信託報酬の約1%を
SEEDCapに寄与しています。
つまり、ファンドの預かり資産(ストック)が増えれば、増えるほど、社会への拠出が増える。
そのようなエコシステムをつくることに努めています。
大事なことは、このフローとストックの話は非営利NPOの世界の課題だけではないということ。
これも是非、理解していただきたいです。
日本の現役世代の個人のほとんどが給料というフローで日々生活をしています。もちろん
決して悪いことではなく、当たり前のことです。しかしながら、長期的な視野で自分の将来を
考えたとき、自分のフロー(給与)はいずれ枯れます。そのとき、フローだけに頼っている
ようでは自分の生活が成り立たないことはあきらかです。
つまり、長期的な視野では、フローだけに頼るだけではなく、自分自身のストックをつくる
ことが必須であることが見えてきます。これが、私が「年金サプリ」とネーミングしている
積み立て投資です。
あすか会議の分科会の会場で、そして、また夜の12名ぐらいのラウンドテーブルの「ナイト・
セッション」で、この「年金サプリ」の必要性のことを話しましたが、多くの皆さんが高い関心を
示していただきました。自分の生活に時間軸を刺す長期的な視野により、もっともっと多くの
現役日本人に「年金サプリ」(積み立て投資)というストックづくりの重要性に気づいて行動
していただきたいです。
来週は、積み立て投資のセミナーも立ち上げています。
7月10日(日) 10:00〜11:30
渋澤健が語る「よりよい明日のためのお金の使い方」~今こそ、つみたて投資~
7月11日(月) 19:00〜20:30
星野泰平(つみたて博士)×渋澤健 ケイゾクハチカラナリ~今こそつみたて投資!~